今回は、先日「夫の海外赴任を『自分ごと』にする」を出版された中原美由己さんに送られた、某化学系企業の人事部の女性の元駐在妻を採用することについてのメッセージをご紹介いたします。

エッセンシャルな人生を送る駐在妻・ママが夢・想いをどんどん叶えていく「わたしらしい幸せ」ライフエディター湯本レイナです。

 

「いろいろ異なる経験をした人が活躍する場は、もうすでに形成され始めている」某化学系企業人事部の方

中原美由己さんは、著書「夫の海外赴任を『自分ごと』にする グローバル駐在妻の選択~”転機”をチャンスに~」で、ネットリサーチの結果や、駐在妻経験者へのアンケートやインタビューから生の声を集めて、駐在先での生活について、そしてその経験をこれからの人生に活かしていくことについて、まとめていらっしゃいます。

この本の著者である中原さんの論文を読んだことがきっかけで、元駐在妻を採用することにした某化学系企業の人事部の方が、中原さんにメッセージをお送りされたそうです。

現在、駐在先で「ここでできることを頑張る!」とスキルアップや経験幅を広げていらっしゃる駐在妻、本帰国後の働き方に迷いを感じる方元駐在妻にとって、お役に立てばと思いご紹介します。(中原さん、メッセージを送ってくださった人事部の方に掲載の許可を頂いております)

中原さん:私の知り合い(人事:女性)が、今回の本を読んでくださった感想と合わせて、嬉しいメールを送ってきてくれました。

以下、メールの文面です。


数年前、元駐在妻を中途採用しました。中原さんの論文があったからです。

募集は、薬剤師資格保持者の枠でした。 わが社が化学系企業であることで、薬剤師を常に必要としていないため、採用は難航していました。 応募者はたくさんくるが、面接をしても人物が合わない状況でした。

そんななか、ある女性の面接をしました。結果的にその方を採用したのですが、その方は、元駐在員の奥さまでした。 当時、年齢は30代半ば、子供は2人で、下の子が8~9才でした。だから残業はできない。ベルダッシュで帰社することが条件。 旦那さんの次の赴任は不透明。単身赴任か帯同か決定したら考える。こどもの学校の状態次第。 しかし、数年後、子供の手が離れたら、総合職として管理職も目指してみたい。自分の実力を試してみたいというお話しでした。

実は、彼女は、資格保持者でしたが、部門としては、子供がいることが理由で履歴書段階で不採用になりそうでした。 しかし、私は、元駐在妻であり、語学力、今後のわが社の市場を考えて、私が面接を実施するところまで社内調整しました。 つまり、「会うだけあってみましょう」です。

面談を経て、彼女の意識と自立したところ、もちろん語学力で結果的に採用となりました。 彼女を採用した我が社の理由は、語学力を維持するための継続した努力(帯同前も育児後も同じ)です。 彼女は常に、できる範囲で努力をしていて、語学力やその分野の知識を向上させ続けていました。

子供がいるため、あえて派遣社員で働いていた時もあったけれど、そのときも将来に向かっての知識を維持できるよう勉強していました。 仕事に対する意識も高いし、子供が居る、将来退職するかもしれないというリスクはありますが、何よりも安定感がありました。

一方で、当初履歴書段階で不採用になりかけた理由は、子供の年齢でした。募集ポジションは残業と出張が見込まれました。 しかし、子供はいつか成長する。だから働ける。旦那は転勤になるでしょう。しかし、そのときについて行くかは、本当にわからない。 こういったコミュニケーションを社内でさせていただきました。

今の日本の労働市場は、帯同者だからと言う理由ではなく、男性も女性も「何ができる人なのか?」というところがキーになっていると感じます。 つまり、帯同者だからとか関係なく、できることが年齢と給与、ポジションと合致していないと結果的に難しい。 帯同者でなくても、主婦でできることがあれば、採用される可能性はあります。 入社後の育成にどこまでかけられるかわからないからです。

帯同者の方についていうと、やはり何ができるのか?というところの期待を、裏切ってはいけないように感じます。 他の方と違う経験を経ているのだから、そのスキルや人間的な深みは武器に成ると思います。 私が中原さんと出会った頃と今では、労働市場や職場環境は大きく変化しています。

これからではないでしょうか?年齢ではなく、何ができるかで年収が決まる時代になってきました。 スキルと給与が見合うように設定されていきます。 その給与に満足ができない場合は、自分を高めるしかありません。それは誰も同じ。 自立と自律、キャリア形成が本当に大事な時代になってきましたよ。 中原さんの論文がなければ、女性の採用時にいろいろ考えませんでした。

我が社にきてくださった先述の女性は、お子さんの手が離れ、来春からキャリアアップです。 当初の計画通りです。もちろん、ご主人が転勤になるかもしれません。しかし、私は、彼女が離職しても彼女が残してくれた働き方、意識はこの会社の財産になると思っています。

今でも、帯同者の方の募集はさせていただきたいくらいです。 語学のスキルと順応力の高さは武器です。 グローバル化、変化し続けないといけない企業では、この2つが大事ですよね。 いろいろ異なる経験をした人が活躍する場は、もうすでに形成され始めていると思っています。


 

私たち駐在妻ができること

まだ手がかかる子どもがいるから・・・、駐在期間のブランクがあるから・・・、また駐在になるかもしれないから・・・。本帰国後の元駐妻にとって、自分が目指したいキャリアにチャレンジすることって、なかなか高い壁を感じることと思います。

一方、企業側は、このメールの方のように感じている方がいらっしゃる。すべての企業がそうだとは限らなくとも、少なくてもそのような時代が来ていることを現場の方は感じている。

そういう時代に「仕事をしたい!」と思う私たち駐在妻ができるコトは、「状況」に対して自分から制約をつくるのではなく、「こういう状況だからこそ、今の自分には何ができるのか」「これからの自分のためにどんな努力をしていくべきか」を止まることなく考え・動き続ける、ということではないかなと感じました。

それは今のスキルをさらに深めることかもしれませんし、もしくはこれまでの経験の幅を広げるためにヨコ展開して新たなチャレンジをすることかもしれません。人生100年時代を生きる私たち世代にとっては、このことは駐妻に限ったことでもないかもしれません。